宮田ゆりと目黒めぐみの"世界"

新年あけましておめでとうございます!


2017年は多くの作品に触れる機があったものの、受容するばかりで特に感想を発信することもありませんでした。


そのため、数多くの漫画やアニメを見てるせいか記憶が曖昧になり、「この作品、なんか良かった気がするけど、どこが良かったんだっけ?」となることが多発しました。 

このままじゃマズイ!と思い、この度ブログを開設することになった次第です。



さて、今日はアニメ『つうかあ』の話をしていきたいと思います。 ネタバレ含みますのまだ見てない方はご注意ください。

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http://twocartv.jp/


ご存知の方も多いかと思われますが、『つうかあ』とはサイドカーレーシングを題材とした作品で、三宅島で開催される全国大会に挑む女子高生がそれぞれのパートナーと共に、様々な問題を乗り越えながらスピードを追求していく様子が描かれています。


この様々な問題とは主にパートナー間での関係を指してまして、第2話では全国から三宅島に集まった6組のうち3組がパートナーと別々の宿に宿泊するなど、パートナー間での不和が示唆されます。

まぁ当然の流れで、パートナー間の関係悪化→事件発生→不和解消→関係強化という構成をそれぞれ3組で繰り返すわけなんですが、この作品の面白いところは、一見関係がギスギスしてて雰囲気が悪いのですが、そのギスギスはパートナー間に留まっていて、他校との関係は全く影響がなく、むしろ「良好」なんですよね。


つまり、全ての物語はパートナー間で完結してるんです。

昨今では「3人からがカップリング」とか女と女の有機的関係が流行りですが、この作品からは「二人だけの百合をやっていくぞ!」という気概を感じますね。

それではこの話を踏まえて、主人公ペアの宮田ゆりと目黒めぐみの二人の話に移ります。

彼女ら二人は家が隣同士の幼馴染で、 仲が良い親友でした。しかし、両方が側車部コーチの棚橋というサイコパスレーサーに恋心を抱いてしまったばかりに、二人は喧嘩ばかりするようになります。

そんななか、棚橋コーチは自分の夢を叶えるためにマン島に移住します。
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「俺は俺の目指す世界で優勝する。お前達もお前達の世界で勝利を勝ち取れ」
「全国大会優勝します」 
「私は私の世界で勝利する!」


ここでの「世界」の指す意味なんですが、棚橋コーチにとっての世界とはマン島TT、宮田ゆりと目黒めぐみにとっての世界とは全国大会、つまりそれぞれの戦うステージのことだと推測できますね。ゆりとめぐみに関してはレーシングだけでなく、棚橋コーチを巡る恋愛的な意味での勝負のこともニュアンスとして含まれているとも解釈できます。

こうして「全国大会で優勝してマン島TTに出場し、棚橋コーチを自分のものにする!」という目標が二人のモチベーションになっていくわけですが、11話で大きく揺らぐことになります。

なんと棚橋コーチがマン島TT覇者のバーチャル・ベティさんと婚約しちゃいます。

ここで彼女たちを今まで支えていた「棚橋コーチ」というモチベーションが突如消失してしまい、結果としてバランスを崩した二人は事故り、めぐみは足を負傷します。

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もうダメかと思っていたところ、棚橋コーチがドライバーとパッセンジャーを交換しての出場を提案。

率直に「正気か?」って思いました。
事故って負傷した直後に、慣れないポジションで無理やり出場させるなんて人の心を持ってないとしか思えません。

もちろん彼女たちも抵抗。
「夢なんてみんなが叶うものじゃない。誰かが勝てば誰かが負ける。みんなが勝つなんてできない!」
そこで棚橋コーチはいつか言ったあの言葉を、もう一度投げかけます。

「だからこそだ。お前達は、お前達の世界で勝利を勝ち取れ!」
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ここで使われてる「世界」、単純に勝負の舞台を指してるわけではありません。
ここでの「世界」とは、もっと内的な話をしています。
レーシングとは競争、自分以外の誰かとの闘いですが、サイドカーレーシングは外敵との単純な競争ではない、ドライバーとパッセンジャー、マシンの上二人で作られる「世界」の中でいかにパフォーマンスを発揮できるかという内的な闘いなのです。
棚橋コーチのサイドカーレーシング観はそのようなものなのではないでしょうか?


結局二人はポジションをチェンジしてのレース参加を決めます。

ですが、もちろん慣れないポジションでは思ったようにスピードが出せません。
途中でマシンを止め、殴り合いの喧嘩に発展します。

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「私たち、何で走ってるんだっけ……?」
「優勝してマン島行ってコーチに告白するためじゃない?」
「本当に……?コーチと出会う前は?」
「それは、好きだから……」
「私も……」
「ゆりと走るの、好きだから」
「めぐみと走るの、好きだから」


そうです、もともと二人がサイドカーレーシングをやっているのは、「相棒と走るのが好き」だからなのです。
コーチのような外的要因じゃない、二人の世界の"内側"に「走る理由」があったことを発見します。
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これで「世界」は「完成」しました。


もうこうなれば無敵です。お互いをよく理解できてる二人は、ポジションをチェンジしても相方の動き方を再現し、最高のパフォーマンスを発揮します。

「「私は、私の世界で、勝利する!!」」
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なんていうか、もう本当に美しかったです。「世界」なんてもの見せつけられたらそれ以上言葉は出てきません。あまりにも莫大すぎる。

それに考えてください、「世界」が7つも動いてるサイドカーレーシング、やばくないですか?
もうよくわかりませんね。

とにかく良いアニメでした!
3話の花火の演出とか、10話のレズアテレコとか、見返したい部分たくさんあるので、近いうちに2周目3周目いきたいと思います。